東京地方裁判所 平成7年(行ウ)207号 判決 1996年1月25日
住居所不明
(送達場所 東京都港区西新橋三丁目二二番五号芝郵便局留)
原告
プァーセック社こと浅野雅実
東京都港区芝五丁目八番一号
被告
芝税務署長 西澤博
右指定代理人
新堀敏彦
同
古川敞
同
倉嶋充
同
古賀謙二
主文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 原告
1 神奈川税務署長が平成四年二月六日付けでした原告の平成元年分の所得税の更正を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文と同旨
第二事案の概要
一 本件は、神奈川税務署長が平成四年二月六日付けでした原告の平成元年分の所得税について総所得金額を一〇六六万一九〇〇円、納付すべき税額を二四万五七〇〇円とする更正(以下「本件更正」という。)に対し、原告が、本件更正は青色申告の個人事業主に認められている欠損金の繰越を行っていないとして、その取消しを求めたものであり、本件更正に対する審査請求が前置されているかどうかが争われた事案である。
二 争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は、原告が本件更正について適法な審査請求を行ったかどうかであり、この点に関する当事者の主張は、次のとおりである。
1 被告
税務署長がした所得税の更正の取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができない(国税通則法一一五条一項)ところ、原告は本件更正に対する審査請求を行っていないから、本件訴えは、不適法である。
なお、原告は、かって、神奈川税務署長を被告として、本件更正の取消しを求める訴えを提起したが(横浜地方裁判所平成五年(行ウ)第一〇号)、平成五年一一月一七日、不服申立ての前置がされていないとして訴え却下の判決がされ、控訴したが(東京高等裁判所平成五年(行コ)第二一六号)、平成六年四月二七日控訴棄却となり、さらに同年五月三一日その上告も却下された。
2 原告
原告は、本件更正に対する審査請求を平成三年八月五日にしており、不服申立ての前置に欠けるところはない。
第三当裁判所の判断
甲第二号証、乙第一号証、第四、五号証ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、(一) 原告は、平成二年三月一五日、平成元年分の所得税について確定申告をしたところ、神奈川税務署長は、平成三年六月二八日付けで、原告に対し、平成元年分の所得税の更正(以下「第一次更正」という。)をしたこと、(二) 原告は、平成三年八月五日、第一次更正について審査請求をしたこと、(三) その後、神奈川税務署長は、平成四年二月六日付けで、第一次更正を取り消したうえ、改めて同日付けで本件更正をしたこと、(四) そのため、原告の第一次更正に対する審査請求については、平成四年一一月一二日付けて、処分の存在を欠くことになったとして却下の裁決がされたこと、(五) 原告は、本件更正に対しては異議申立ても審査請求もしていないこと、が認められる。
そうすると、本件訴えは、本件更正について国税通則法一一五条に定める不服申立て前置の手続を経ることなく提起されたものとして、不適法であり却下を免れない。
よって、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 橋詰均 裁判官 徳岡治)